毎日なんとなく与えていると猫の食べる量の変化に気づけません

この記事の目次
  1. 「半分くらい」は、比べられない
  2. ウェットとドライは、足さない
  3. 出しっぱなしの器は、一週間だけ畳む
  4. 残りは、捨てる前に計る
  5. 道具は、変えないことのほうが大事
  6. 数字の横に、一行だけ
  7. 見るのは、一日ではなく週
  8. フードを変える前に、電話する
  9. ノートが効いてくるのは、あとから

猫の食べる量の変化に気づけないのは、記憶力の問題ではなく、測り方の問題です。出した量と残った量をグラムで測って記録し、ウェットとドライを別々の数字で書き、同じやり方で測った一週間の平均を前の週と並べる。この三つを先に決めておけば、「なんとなく少ない」は比較できる数字になります。

うちの台所の話をします。

朝の六時半、窓の外がまだ青い時間に、私はまな板の横へ小さなデジタルスケールを出します。電源を入れて、空の器を載せて表示を0に戻す。スプーンでウェットをすくって器に移すと、湯気が立って、数字が二、三度跳ねてから止まります。その数字を、冷蔵庫の扉に貼った小さいノートに書く。隣の器にはドライを入れて、同じように計って、また書く。一分半の作業です。

あなたの家でも、たぶん同じ光景があるはずです。器の前に座った猫が一口食べて、顔を上げて、こちらを見る。その横顔を見て「今日は少ないな」と思う。ここまでは誰でも同じで、分かれ目はそのあとにあります。その「少ない」を、昨日の数字と並べられる形で残したかどうか。

「半分くらい」は、比べられない

以前の私は、ノートにこう書いていました。「夜、半分くらい」。

これが何の役にも立たないと気づいたのは、二週間ぶんのページを眺めたときです。半分くらい、が四日続いている。では昨日は何グラムで、先週の火曜はどうだったのか。ページの上では、まったくわかりません。半分は半分でも、その日の気分で八割にも三割にもなる言葉だからです。

数字にすると、話が変わります。三日の夜はウェット28g、ドライ12g。四日の夜はウェット30g、ドライ4g。この二日は、私の目にはどちらも「半分くらい」でした。しかしドライは三倍ちがう。目分量というのは、これくらい簡単に外れます。

だから、まず言葉を捨ててください。「少し」「半分」「がっつり」は記録から消して、グラムだけを残す。それだけで、比べる土台ができます。

ウェットとドライは、足さない

ここで一度つまずきました。最初のうちは、ウェット20gとドライ20gを足して「今日は40g」と書いていたのです。

ある日、ウェットを多めに出した日と、ドライを多めに出した日が同じ「40g」で並んでいるのを見て、ぞっとしました。中身がまるで違うのに、同じ数字として扱っていた。ウェットは大半が水分で、ドライはほとんどが乾物です。同じグラム数が同じ中身を意味しないのは、感覚としてわかりきっているはずなのに、記録の上では平気で混ぜていました。

それからは、ノートの一行を二つに割っています。左にウェット、右にドライ。合計は書きません。合計を書くと、どうしてもその一行だけを見て安心してしまうからです。見たいのは合計ではなく、どちらがどう動いたかです。

出しっぱなしの器は、一週間だけ畳む

いちばん難しいのは、器に常にフードが入っている家だと思います。うちもしばらくそうでした。

この状態で「食べた量」を出そうとすると、計算が成立しません。残っている器に足すと、新しい分と残りが混ざる。昨日の残りがどこまでで今日の分がどこからか、もう区別がつかない。足すたびに、記録は読めないものになっていきます。

やったのは、一週間だけ、出しっぱなしをやめることでした。朝と夜の決まった時刻に、いつもと同じ量を出して、一定の時間がたったら下げる。その一週間で、その猫が実際に一日どれだけ食べているのかが、初めて数字になります。

これは食事の改善ではなく、測定です。だから一週間で終わらせていい。旅行の予定がなく、家にいられる週を選んでください。器を下げられるのがつらい子なら、下げる時間を長めにとる。それでも落ち着かない様子が強ければ、その週はそこで打ち切ってかまいません。測れないことより、猫が消耗するほうが困ります。

多頭飼いの家では、これでも足りません。二匹が同じ器を回ると、残りの数字が誰のものか決められない。うちは一週間だけ、部屋を分けて別々の器にしました。それが無理な家なら、合計だけを記録して「個体別は不明」と正直に書いておく。書けないことを書かないのも、記録の一部です。

残りは、捨てる前に計る

見落としやすかったのは、残りの計り方でした。

ウェットを出して、猫が一口食べて、行ってしまった。そのまま二時間たってから器を下げて計ると、数字が実際より軽く出ます。水分が抜けているからです。残りが軽く出れば、そのぶん「食べた量」は大きく出る。実際には食べていない分を、食べたことにしてしまう。

だから、残りは猫が離れたあと、なるべく早く計ります。遅くとも下げるとき。器を洗う前に、です。洗ってしまったら最後、その日はもう取り返せません。器のふちや底に張りついた乾きかけも、ヘラで寄せて一緒に載せます。

ドライも、まったく無傷ではありません。梅雨から夏にかけて、開けた袋のドライは湿気を吸って、同じすくい方が同じ重さにならないことがあります。うちでは、袋を開けた日からの日数もノートの端に書くようにしました。数字が妙に動いたとき、フードのせいなのか猫のせいなのかを、あとから切り分けられるようにするためです。

道具は、変えないことのほうが大事

計る道具は、キッチンスケールでも、計量カップの目盛りでも、どちらでも構いません。1g単位で読めるスケールなら、いちばん細かく追えます。カップしかない家なら、毎回同じカップで、すりきりにせず、同じすくい方で。

ただし、途中で替えないでください。スケールで測っていた週の次にカップで測ると、その差が猫の変化なのか道具の変化なのか、もう判別できません。カップの数字は、粒の形が変われば同じ目盛りでも重さが変わるので、フードが切り替わった時点で比較の意味も切れます。変えていいのは、記録を始める前だけです。

あと、地味に効くのが「計ったらすぐ書く」です。夜にまとめて書くと、どの日の分かわからなくなります。私はスマホで写真を撮る日もありました。写真フォルダに日付が残るので、ノートを書く暇がない日はそれで済ませていました。

数字の横に、一行だけ

グラムだけでは足りない、と感じたのはしばらくたってからです。

同じ28gでも、出してすぐ完食した28gと、三回に分けて渋々食べた28gは、こちらが受け取る印象がまるで違う。その差は数字に出ません。だから、グラムの横に一行だけ書き添えるようにしました。何時に食べたがったか。勢いよく食べたか、途中で歩き去ったか。そのあと戻ってきたか。

この一行が、あとで効きます。暑さで食欲が落ちる時期なのか、来客があって落ち着かない日が続いたのか、単に今日だけ少なかったのか。数字だけを見ていると全部同じ「減少」ですが、横の一行があると、理由の見当がつくようになる。見当がつけば、慌てずに次の一週間を待てます。

見るのは、一日ではなく週

猫の食べる量は、日単位で見るとよく動きます。10gや20gの上下は、うちではしょっちゅうありました。それを毎日追っていると、一喜一憂するだけで終わります。

比べるなら、一週間ぶんを足して七日で割った平均と、前の週の平均。これくらいの粒度がちょうどいい。二週続けて下がっている、というのは、一日だけ減ったのとは重みが違います。

ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。数字を集めることと、量与えることを決めることは、別の話です。記録がついても、その猫に何グラムが適切なのかは、私には判断できません。体重も、年齢も、活動量も、持病も違う。だからノートには、量の目標は書きません。書くのは、事実だけです。

フードを変える前に、電話する

量が落ちて、それが何日も戻らない。暑さや環境の変化など、思い当たる理由もない。そういうときは、家でフードをあれこれ変えるより先に、かかりつけの動物病院へ電話しています。

理由は単純で、変えてしまうと基準が消えるからです。新しいフードに替えた週からは、前の週と比べられなくなります。せっかく積んだ数字が、その時点で途切れる。それに、食べない理由が口の中なのか、歯なのか、別のところなのかは、私には見分けられません。見分けられないものを、台所で決着させないほうがいい。

電話するとき、ノートを持っていきます。あるいは写真を送る。「ここ二週間、一日の平均がこれだけ落ちています」と言えれば、話が早い。あいまいな「最近少ない気がします」より、ずっと多くのことが伝わります。

通院している猫は、獣医師の指示が何より優先です。この記録は、その指示を置き換えるものではなく、補助するためのものです。

ノートが効いてくるのは、あとから

正直に言うと、測り始めた最初の一か月は、面倒でした。

それでも続いたのは、記録があると、こちらが落ち着くからです。今日少なかった、と焦る代わりに、先週の平均と並べて「まだ範囲内」と確認できる。その落ち着きが、猫にも伝わっているような気がします。

三か月もたつと、季節の癖が見えてきました。暑い時期に少し落ちて、涼しくなると戻る。毎年そうなら、それがその猫の形です。数字は、一度きりの異常を見つけるためだけでなく、その猫の普通を知るためにある。

毎日なんとなく与えていると、変化には気づけません。気づくためには、先に「なんとなく」をやめて、同じやり方で測って書く。それだけのことで、半年後のあなたは、獣医師の前で数字を一つ言える人になっています。

縁側の猫係

著者について

縁側の猫係

幼い頃から猫と共に暮らしてきた人たちの著者名義です。畳や縁側のある暮らしのなかで、日々の食事、毛づくろい、トイレ、季節の備えを重ねてきた経験をまとめています。

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