冬に猫の目やにが増えるとき、原因は目そのものより部屋の空気にあることが多い。暖房で室温が上がると空気中の水分は相対的に減り、目の表面は乾きやすくなる。乾いた表面にホコリが乗れば、それは涙やにとして固まりやすい。だから目やにを拭く前に、湿度計の数字と、暖房の風がどこへ向いているかを確かめてほしい。

朝、猫の顔をのぞき込んで気づいた。目頭に茶色くかさついた塊がついている。指の腹でそっと触れると、乾いた土のような手ざわりで、一度では取れない。前の晩にはなかった。
ふと顔を上げると、テレビ横の湿度計の針は30%を切っていた。窓ガラスは結露せず、乾いている。石油ファンヒーターの温風は、猫のベッドへ向かって斜めに流れていた。私は目やにを取るためにティッシュを探していたが、見直すべきだったのは部屋のほうだった。
それから、冬になるたびに同じ手順で部屋を見るようになった。湿度計、風の向き、ホコリ、換気、加湿器の水。順番はだいたい決まっている。
湿度計は体感より先に見る
「寒い」と「乾いている」は同時に来るので、体感では区別できない。暖房をつけた部屋に入って肌がつっぱる、喉が渇く、髪が静電気で浮く。どれも湿度が下がっているサインだが、どのくらい下がっているかは分からない。だから湿度計を置く。よく言われる目安は40〜60%で、まずはそこから外れていないかを見る。
置き場所は、猫が一日の大半を過ごす高さに近づける。人が立って顔の高さで測った数字より、猫の寝床のそばで測った数字のほうが、その猫の顔まわりの空気に近い。
うちでは湿度計の位置を動かさない。昨日と同じ場所で、昨日より下がったかどうかだけを見る。湿度は外気と暖房の効き具合で一日のうちに動く。朝いちばんが低く、夜、窓を閉め切って暖房をつけ続けた時間帯にも下がる。記録しておくと、加湿が足りないのか、そもそも換気が足りないのかの区別がつきやすい。
温風の通り道から寝床をずらす
加湿より先に効くことがある。風が同じ面に当たり続けると、その部分だけが乾く。猫の顔は、体の中でも特に風を受けやすい場所にある。うちではファンヒーターの正面を避けてベッドを置き直した。猫は暖かい場所を自分で選ぶので、ベッドを動かしても戻ってきてしまう。だからベッドではなく、風の向きを変えるほうが早い。首を振る設定なら止めるか、猫のいる側を外す。
こたつとヒーターに寄り添う時間
冬の猫は、こたつの中とヒーターの前から動かない。それは普通のことで、止める必要はない。ただ、何時間も顔を温風や輻射熱に寄せていると、顔の表面は乾く。だから冷えた場所も一つ残しておく。猫は暑くなれば自分で移動する。移動先がない部屋だと、乾いた場所に居続けることになる。触ってみて顔がいつもより熱い、目をしょぼつかせる、といった様子が続くなら、それは部屋の話ではなく動物病院に相談する話だ。
お金をかけずに湿気を足す
湿度計を見て足りなければ、まず家にあるもので足す。部屋干しの洗濯物は、乾くまでの間、確実に湿気を出す。ヒーターのそばに湯を張ったボウルを置く方法もある。倒れない場所、猫が届かない場所、そして人が蹴らない場所に限る。効果は劇的ではないが、朝と夜の底を上げるには十分効く。加湿器を出す前に、この二つで足りることが多い。
ホコリは下から舞い上がる
湿度を上げても目やにが減らないときは、空気中のホコリを見る。トイレの砂は、猫が出入りするたびに足について部屋へ運ばれる。畳、カーペット、カーテンの裾には、それが積もる。乾いた目にホコリが乗れば、にごりや固まりの材料になるからだ。
掃除の順番を変えると楽になる。トイレの前と、猫の寝床のまわりだけは、掃除機をかける頻度を上げる。カーテンの下のほうも、洗濯のたびに一度払う。フローリングは乾拭きより、固く絞った拭き掃除のほうがホコリを残しにくい。
換気は短く、何度も
寒いからと窓を閉め切ると、空気はよどみ、ホコリは浮いたままになる。かといって長く開けると室温が落ち、猫が冷える。数分を一日に何度か、で足りる。猫を別の部屋に移すか、猫から離れた側の窓を開ける。冷気は床を這うので、猫が低い場所で丸まっているときは特に気をつける。換気をすると湿度もいったん下がる。だから順番は、換気のあとに加湿。
加湿器の水は毎日入れ替える
加湿器を出したら、タンクの水は毎日捨てて入れ替える。足し水だけで済ませると、タンクの中にぬめりができ、その水をそのまま部屋に撒くことになる。トレーやフィルターの手入れの頻度は方式によって違うので、説明書の手入れの項目だけは先に読んでおく。使わない日はタンクを乾かす。これは手間の話であって、効果の話ではないが、冬の間ずっと続けるなら最初に決めておいたほうがいい。
静電気も同じ合図
乾燥が進むと、ブラシを持つ手と猫の背中の間でパチッと音がする。猫が飛びのいて、その日はブラッシングをさせてくれなくなる。カーペットの上を歩いたあとの毛づくろいのときにも起きる。静電気そのものは目やにとは別の話だが、部屋が乾いているかどうかを教えてくれる合図としては分かりやすい。湿度が上がれば減る。ブラシを握る前に金属のドアノブに触れておくだけでも違う。
それでも続くときの線引き
私が部屋を見直して対応するのは、量が少なく、色が薄くて、朝に拭けばその日はおさまる範囲だ。量が急に増えた、色が濃い、左右で違う、目をしょぼしょぼさせる、前足でしきりにかく、まぶたが腫れている、鼻水やくしゃみが続く。こういうときは湿度の話ではない。動物病院で見てもらう。
最後に一つ。目やにを拭いて終わりにすると、翌朝も同じことを繰り返す。ティッシュを捨てたら、湿度計を見て、風の向きを確かめて、トイレの前に掃除機をかける。やることは毎年同じでいい。部屋のほうを直せば、猫の顔は翌朝には少し変わっている。