梅雨の部屋の湿度は40〜60%に収める。そのために要るのは、部屋の真ん中に置いた湿度計を一日一回眺めることではなく、数字の出る場所を決めて床際・窓際・収納の中を測り、濡れているものを先に拭き、外気が乾いている時間だけ換気し、最後に機械に渡す、という順番を毎日同じように回すことだ。この順番を入れ替えると、同じ除湿機を回していても数字は下がらない。
廊下に素足を下ろすと、フローリングがまだ湿りを残している。梅雨の朝はたいていそうだ。リビングの棚の上、目の高さにある湿度計は58%を指している。悪くない数字だ。でも足の裏は、もっと低いところの話をしている。しゃがんでテレビボードの脇の小さいほうを覗くと71%。カーテンの裏、窓ガラスに近いところは76%だった。同じ部屋で、これだけ違う。
だから朝いちばんに見るのは、高いところの数字ではない。低いところの数字だ。
湿度計は「部屋」ではなく「場所」に置く
棚の上の58%は、部屋の平均でも何でもない。人が立って過ごす高さの、壁から離れた、風の通る場所の数字だ。カビが最初に育つのはそこではない。冷たい床際、結露する窓、外壁に接した収納の奥。湿度計を一つだけ買うなら、私はそれを床に近いところへ置く。棚の上に飾るのは二台目でいい。
目安は、床から10〜20cmくらいの高さ。窓ガラスから30cm以内。そして押し入れやクローゼットの、戸を開けた内側。この三か所を朝と夜に見る。全部に一台ずつ置く必要はなくて、うちでは小さいのを一つ、その日いちばん怪しい場所に移して測っている。移した直後は読まない。30分は待つ。手で持った温もりや、閉じていたケースの中の空気が残っているからだ。読むときに息を吹きかけない。洗濯物の真下に置かない。それだけで数字の意味が変わる。
家の中で最初に越える場所
80%という数字は、20〜30℃くらいの温度とセットで効いてくる。一日のピークが80%でも、それだけで即カビというわけではない。厄介なのは、下がらないまま朝を迎えることだ。
うちで最初にそれをやるのは浴室と洗面所だった。入浴後、壁の水滴をそのままにして戸を閉める。翌朝、脱衣所の床はまだ濡れている。ここが一番早い。次が台所で、換気扇があるぶん救われてはいるが、シンクの水滴と、濡れたまま伏せた食器かごは効く。三番目が押し入れだ。外壁に接した側は温度が低く、湿気が集まりやすいのに、戸を閉めているから風も入らない。梅雨のあいだ、うちの押し入れの下段は部屋より5〜10%高いことが多い。だから晴れた日に開けるのではなく、湿度の低い日に戸を開けて、送風か除湿機を30分だけ当てる。
猫のベッドの下、キャットタワーの陰、窓際に敷いたラグの下も同じ理屈で湿る。猫が長く寝ている場所は、たいてい通気が悪い。うちの猫は梅雨になるとフローリングの上で伸びている時間が増える。冷たいところを探しているのだと思う。その様子は参考にするが、判断はしない。数字のほうを見る。
換気と機械のあいだで順番を決める
梅雨の外は、それ自体が湿っている。雨の日に窓を開ければ、ほぼ飽和に近い空気を部屋に招き入れることになる。だから換気は「湿気を出す作業」ではなく「空気を入れ替える作業」として扱う。短く、回数を決めて。開けっぱなしにはしない。
判断は簡単で、天気予報の湿度を見る。50%台なら窓を5〜10分。70%以上なら窓は閉めて、浴室と台所の換気扇だけを回す。外が乾いているときは窓、湿っているときは換気扇。それだけ決めておけば迷わない。
そのうえで、一回の流れはこうなる。まず拭く。浴室の壁と浴槽の蓋の裏、洗面台の水、台所のシンク、結露した窓、猫の水皿のまわり。次に発生源を止める。部屋干し、加湿器、加湿機能のついた運転、観葉植物の受け皿の水。それから換気。閉めて、最後に機械。
拭くのが先なのは、拭くこと自体が除湿だからだ。コップ一杯の水を床にこぼせば、それは蒸発して部屋の湿度になる。浴室の壁一面の水滴はコップ一杯どころではない。換気扇を回す前に拭く。逆にすると、拭く前に湿った空気を家中に撒くことになる。
冷房除湿か、置き型か
機械は、どれも同じようには働かない。冷房除湿は冷やして除湿するので部屋の温度が下がる。再熱除湿は冷やした空気を温め直すので、室温は下がりにくいかわりに電気を使う。置き型は、コンプレッサー式もデシカント式も、部屋の温度が上がる傾向がある。ペルチェ式は能力が小さく、狭い空間向けだ。
つまり選び方は、室温で決まる。蒸し暑い日は冷房除湿。涼しい雨の日は再熱除湿か置き型。洗面所や押し入れの前、廊下のように狭くて冷えやすい場所は置き型が扱いやすい。
これは、六月の半ばに一度失敗してから決めたことだ。涼しい日に冷房除湿をかけたら部屋が24℃まで下がって、猫が毛布に潜った。それ以来、26℃以上なら冷房除湿、それ以下なら置き型、と線を引いている。室温を見ずに「除湿」の文字だけで運転を選ぶと、湿気は取れても部屋が寒くなる。
40%を切らない
下げればいいというものでもない。40%を切ると、今度は乾きすぎが気になりはじめる。猫も人も鼻や喉が乾く。狙うのは50〜60%で、40%を下回ったら機械を止める。梅雨のあいだにそこまで行くことは少ないが、エアコンをかけっぱなしにすると起こる。湿度計を見ずに冷房を信じていると、気づいたときには45%を切っている、ということが普通にある。
一日の回し方と、記録
朝、床際と窓際と押し入れの数字を見て、天気と一緒にメモに書く。出る前に浴室と洗面所の水滴を拭いて、換気扇を10分。帰宅したら、窓を開ける前に外の湿度を確認して、台所を拭く。夜は寝室かリビングに機械をかけてタイマー。押し入れは週に一度、戸を開けて30分。週末にラグの下、家具の裏、窓の結露を見る。
記録はノートでもスマホのメモでもいい。日付、天気、三か所の数字、やったこと。二週間も続けると、その家の癖が見えてくる。この窓は開けると上がる、この時間帯は外が乾いている、この押し入れは雨の翌日が危ない。うちでは、雨の翌朝の洗面所が一番早く80%に近づく。だからその日は朝のうちに拭いて、換気扇を長めに回すと決めている。決めておけば、迷う時間がなくなる。
最後に、湿度計そのものの話。安いものは数%ずれて、電池が弱ると上にも下にも転ぶ。二台を同じ場所に並べて5%以上違うなら、どちらかを疑ったほうがいい。数字は絶対ではない。それでも「なんだかジメジメする」よりはずっといい。ジメジメは、どこをどうすればいいかを教えてくれない。71%は、教えてくれる。