こたつ猫のやけどと酸欠を防ぐ冬前に見直す安全な使い方のポイント

この記事の目次
  1. ストーブと違って、こたつには危ない合図がない
  2. 点ける前と、座る前に。手を入れる
  3. 「熱くない」は、私の手の話でしかない
  4. コードは床を這う。猫も床を這う
  5. 留守と夜は、タイマーに任せる
  6. 出てきた顔を見る

こたつの猫の事故を防ぐ鍵は、設定温度を下げることではなく、「囲まれた温かい空間を、猫が自分では出てこられない場所として扱う」ことに切り替えることです。冬が来る前に見直すのは三つ。点ける前と座る前にふとんの下へ手を入れて確認する、コードを床から浮かせて壁側へ逃がす、そしてタイマーと設定温度を「留守中も点いたままになる」前提で決め直す。この三つで、やけど、閉じ込め、コードの事故の多くは先に潰せます。

十一月の終わり、その年はじめてこたつのスイッチを入れた夜。台所で茶碗を洗っていると、リビングから「コン」と天板に何かが当たる音がしました。戻ると、ふとんの裾がゆっくり波打っていて、下からしっぽの先だけが出ています。名前を呼んでも返事はなく、声は分厚い布に吸われてしまいました。裾を持ち上げると、まだ温まりきっていない空気がもわっと出てきて、その奥に白い背中。この中に、私は手を入れないと届かないのだと、そのときはじめて思いました。

それまでの冬、こたつは私にとって「自分の足を温める道具」でした。猫が中に入っているのは知っていたし、かわいいとも思っていた。でも、入ってしまえば最後、こちらからは見えない。見えないということは、私が「暑そうだな」と気づく経路がゼロになる、ということです。

ストーブと違って、こたつには危ない合図がない

ストーブなら、近づきすぎれば熱いし、においもある、音もする。猫も人も、危ないと思えば離れる。こたつはその逆で、火も見えず、音もせず、においもしない。しかも設計上、ずっと「心地よい」温度で居続けるようにできています。だから危ないと気づくきっかけがないまま、一時間、二時間と過ぎていく。やけどに効いてくるのは、一瞬の熱さではなく、この「長い時間」のほうです。

点ける前と、座る前に。手を入れる

見るものは、天板の下、ヒーターの上の空間、そしてコード。猫は上から来る圧を読めません。だから座る前にふとんの裾をめくって、目で確認して、手のひらで天板の裏をなぞる。これを「点ける前」と「座る前」の二回に分けるのが、うちでは続いています。点ける前は中の猫、座る前は天板のずれとコード。確認するものが違うので、一回にまとめると必ずどちらかが抜けます。

天板のずれは、私が実際にやらかしました。立ち上がるときに膝で天板を押してしまい、ずるっとずれた。中に猫がいなかったからよかったものの、それ以来、座る前に四隅を押さえて位置を確かめるのが癖になりました。

逃げ口をひとつ作っておく

ふとんの裾が四方とも床に垂れていると、中はほとんど袋です。猫は入るのは得意でも、出るときにもたつく。片面だけ裾を折り返すか、壁側をこたつ本体の上に巻き上げておくと、入った場所とは違う出口から出られます。暑くなったときの逃げが、その分だけ早くなる。見た目は少し崩れますが、うちは冬の間ずっとそうしています。

「熱くない」は、私の手の話でしかない

低温やけどは、熱いものに触れて起きるのではなく、温かいものに長く触れ続けて起きます。人の肌でも、同じ場所に何時間も触れていれば、その温度がそれほど高くなくても皮膚がじわじわ傷む。猫はそれを「気持ちいい」としか言いません。猫の平熱は人より高く、寒さが苦手で、暖かい場所を好む。だから余計に、自分から「もう出よう」と決めるのが遅いのだと思います。

私が測るのは、猫の様子ではなく場所の温度です。手の甲で触れるのは三か所。天板の裏、ヒーターの真上、ふとんの内側。10秒ほど当てて「熱い」と感じるなら、猫には長すぎる場所だと判断しています。逆に「気持ちいい」くらいでも、そこに何時間もお腹を寄せていることを想像すると、ぞっとする。人の手は数秒で判断をやめますが、猫はそこで眠ってしまうので、比べものになりません。

こたつの中は、ヒーターに近い側ほど暖かく、奥は穏やかです。猫は必ずと言っていいほど暖かい側を選ぶので、そこで丸くなっている時間の長さが、そのままリスクになります。長毛種、子猫、高齢の猫は特に、体温調節の余裕が少ない。うちは三匹いますが、いちばん奥に詰められやすい子がいて、その子のためにも逃げ口は多めに開けています。

コードは床を這う。猫も床を這う

こたつのコードは、必ず床の上に出ます。そして猫が歩くのは、たいてい壁沿い。つまりコードと猫の通り道が、いちばん危ない形で重なっている。かじる、引っかける、抜ける、絡まる。特にこたつの脚にきつく巻きつけると、猫が引っかけたときに一気に引っぱられます。

うちでやったのは、太めのコードカバーを買ってきて壁際に沿わせる、の一点だけ。ふとんの下に延長コードを通すのもやめました。見えないところで傷んでいても気づけないからです。コードをかじる猫は、細くて柔らかいビニールを好む傾向があるように見えます。カバーで太くするだけで、興味を失ってくれることが多い。噛み跡を見つけたら、その時点で配置を変える。テープで床に留める方法は、粘着が弱くて剥がれ、かえって遊ばれるので、うちではやめました。

留守と夜は、タイマーに任せる

設定温度を「強」にしたまま出かける、そのまま寝る。これが一番危ないと感じます。理由は猫のためというより、私が見ていない時間が長くなるから。私の家では、出かけるときは電源を切るか、タイマーで切れるようにして、設定は「中」まで。夜も同じです。帰宅したら、まずふとんをめくって中を確認する。そこまでがセットになりました。

締め切った部屋の空気

電気こたつ自体が一酸化炭素を出すわけではありません。ただ、冬の部屋は締め切られます。石油系の暖房とこたつを同じ部屋で併用して、窓も換気扇も動かさない、という組み合わせになると話が変わってきます。うちは石油ストーブを使わない選択をしてから、この心配がかなり減りました。使う日は、換気扇を回すか窓を少し開ける。それだけでも違います。あとは、猫がふとんの中に顔まで潜っていることがある。あの中は空気が動かないので、長く潜らせないように、ときどき裾をめくって顔を出させています。

出てきた顔を見る

耳が熱い、お腹が赤い、口を開けて息が速い、水を飲みに行く、冷たい床に伸びる。これらは「ちゃんと出られた」サインであると同時に、「出るのが少し遅かった」サインでもあります。毎日記録するほどではなくていい。冬の間だけ、出てきた時間と様子をスマホに一言残す。それを何日か続けると、その子がどのくらいで限界になるか、だいたい見えてきます。見えてくれば、タイマーの時間も設定温度も、勘ではなく決められる。

こたつは、猫にとっても私にとっても冬の中心にある場所です。だから「危ないから使わない」ではなく、毎年少しずつ形を直していく。それが現実的だと思っています。スイッチを入れる前に、ふとんの裾をめくって、まだ冷たい中の空気に手を入れる。その数秒が、この冬のいちばん大事な作業です。

縁側の猫係

著者について

縁側の猫係

幼い頃から猫と共に暮らしてきた人たちの著者名義です。畳や縁側のある暮らしのなかで、日々の食事、毛づくろい、トイレ、季節の備えを重ねてきた経験をまとめています。

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