フード切り替えは10日かけて1割ずつ、食べない日の戻し方

この記事の目次
  1. 10日の階段は、グラムで刻む
  2. 段を上げる前に見るのは、器ではなくトイレ
  3. 器の前で起きること
  4. 大きい袋を開ける前に
  5. おやつと食卓の味は、いったん引く
  6. 食べない日は、上げない。戻す
  7. 記録は、便の写真と一言で足りる

フードの切り替えは、10日を目安に新しいフードの割合を1割ずつ増やしていく。1割は重さで数え、1日分が40gなら最初の4gから始める。段を上げてよいか決めるのは食いつきではなく便の状態で、形が崩れる、柔らかい、嘔吐があるならその段に留める。1食食べなければ据え置き、2食続けて残すなら一段階前の配合に戻して数日待つ。全部を一度に入れ替えるのが、いちばん荒れる。

夜8時、台所のシンクの上だけ電気をつけて、私は二つの袋のあいだに小さな計量スプーンを置く。片方は底が見えはじめた袋、もう片方は封を切ったばかりの袋。開けたときのにおいが違う。前のフードは乾いた穀物のにおいで、新しいほうは少し油っぽく、指の腹に粉がつく。

この記事で書くのは、混ぜ方の手順だけだ。どのフードにするか、どれが合うかという話は扱わない。選んだあとの袋を、どうやって器に移すか。そこだけを、私は毎回同じやり方でやっている。

10日の階段は、グラムで刻む

1割というのは、その日にあげる合計量の1割のこと。うちなら1日40gなので、初日は新フード4g、残り36gが前のフード。ティースプーン1杯弱だ。目分量でやると、3日目あたりから静かにずれる。だからキッチンスケールを出し、小さい容器を乗せてゼロに合わせ、まず新フードを4g。次に前のフードを足して40gにする。この順番がいいのは、新フードが少ないうちに測れるからで、何度かやると手が覚える。

段はこう上げていく。1〜2日目が1割、3〜4日目が2割、5〜6日目が3割、7日目が5割、8〜9日目が7割、10日目前後で全部。7日で終わることもあれば12日かかることもある。日数は目安で、実際に進めるかどうかを決めるのは便のほうだ。

指先で混ぜる。二種類の粒は形も大きさも違うから、混ぜても完全には混ざらない。それでいい。混ざりきらないほうが、猫は自分のペースで選べる。

段を上げる前に見るのは、器ではなくトイレ

新フードを気に入って、勢いよく全部食べることがある。それでも翌朝の便が柔らかいなら、私はその段で止める。見ているのは、形、つまめる固さ、色、におい、そしてコロコロの数。スコップで持ち上げたときに崩れないか。半分は拾えて半分が残る、くらいが私の合格ラインだ。

嘔吐も同じくらい大事な信号になる。食べてすぐ戻すのか、しばらく経ってから戻すのかで意味は違うけれど、どちらも「この段はまだ早い」と言っている。段を上げた翌朝から48時間は、便と吐き戻しをセットで見る。何もなければ次の段へ進む。

ここで、私が最初に失敗したことを書いておく。食いつきがいいからと、2日で5割まで上げたことがある。猫は最後まで食べた。翌日、トイレの砂が大きく崩れた。食べる意思と、腸が追いつく速さは別物だった。

器の前で起きること

粒の形が違うと、前歯で拾って片方だけ残すことがある。新しい粒だけを器の縁に寄せて、古い粒をきれいに食べる。これは拒否ではなくて、選り分けているだけのことが多い。

そういうときは、ぬるま湯を小さじ1杯だけ振りかけて5分置く。新フードのにおいが立って、指で押すとへこむくらいになる。ふやかすのが苦手な猫なら、新しい粒を数粒だけ袋の上から麺棒で軽く砕く。粉が前のフードにまとわりついて、逃げられなくなる。

どちらも効かないときは、無理に比率を上げない。2割のまま3日置く。それで食べるなら、そこで初めて3割にする。

大きい袋を開ける前に

封を切ってから「食べなかった」がわかると、袋が残る。だからまず1週間分の小さい袋か、少量のお試しで一周する。10日の階段を最後まで歩けるかを、小さい単位で確かめてから大きい袋を買う。これは金額の話というより、合わなかったときに罪悪感を抱えずに済むという話だ。開けた袋を前に「もったいない」と思うと、どうしても無理に食べさせたくなる。

おやつと食卓の味は、いったん引く

切り替えの間は、おやつを出さない。食卓から何かが渡ることもないようにする。味の濃いものを先に知っている猫は、素のフードの前に座って待つ。待てば来ると思われたら、10日の階段はただの長い沈黙になる。

家族がいる家なら、ここは口に出して共有したほうがいい。私の家では、冷蔵庫にメモを貼った。「今はおやつ禁止、混ぜ物も禁止」とだけ。手のひらを開いても何も出てこないとわかると、猫は三日で諦めて器に向き直った。

食べない日は、上げない。戻す

朝、新しい配合を嗅いで、一口もつけずに離れたとする。昼に下げて、夕方にも残っていれば、その段はなかったことにする。翌日は前の段階の比率に戻して、数日そこに留まる。2割で止まっていたなら、1割に戻す。戻すのは後退ではなくて、階段を一段下で踏み直しているだけだ。

2食続けて食べない、丸1日食べない、水を飲む量まで落ちている。この場合は、私の手順では扱えない。無理に混ぜずに、獣医に相談する。切り替えを止めるべきかどうかも、そこで判断してもらう。

記録は、便の写真と一言で足りる

私はスマホで便を撮る。日付と、その日の比率と、量を一行。きれいな写真を撮ろうとは思わない。3日後に見返すと、自分の記憶がどれだけいい加減かわかる。昨日は大丈夫だった気がする、という記憶は、たいてい一昨日の話だ。

階段は、カレンダーに合わせて登るものではない。猫の腸が返してくる合図に合わせて、一段ずつ。速く上げたところで、得をするのは最初の一回の食いつきだけだ。

縁側の猫係

著者について

縁側の猫係

幼い頃から猫と共に暮らしてきた人たちの著者名義です。畳や縁側のある暮らしのなかで、日々の食事、毛づくろい、トイレ、季節の備えを重ねてきた経験をまとめています。

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