フードを食べない猫はいったん戻せる 切り替えやり直しの手順

この記事の目次
  1. 鼻先で止まるのは、反抗ではない
  2. 押し続けると、そのフードそのものが嫌いになる
  3. 戻す日にやること
  4. 何日待つか
  5. 再開は、前回の半分以下から
  6. トッピングは、食べたことのあるものだけ
  7. 戻すべきなのは、どの拒み方か
  8. 記録の書き方

フードを食べない猫は、いったん元のフードに戻すのが正解です。新しいフードを一口も受け付けないなら、その日の切り替えはそこで中止し、それまで完食していたフードだけを出してください。数日、食べ方が安定したのを確認してから、前回よりもずっと小さい割合でやり直す。この往復は失敗ではなく、次に進むための手順の一部です。

朝の六時、台所はまだ薄暗い。私は二つの茶碗を同時に床へ置く。片方には今まで食べていたフード、もう片方には昨日買ってきた新しいフード。猫は足音もなく来て、新しいほうの縁に鼻を近づける。二回、鼻先が動く。それから座り込んで、私の顔を見る。待っても、舌は出ない。三歩下がって、窓際で毛づくろいを始めた。

この沈黙には慣れている。慣れた今でも、茶碗の前に残った粒を見ると少し腹が立つ。せっかく選んだのに、という気持ちのほうが先に来る。でも、そこで押したら何が起きるかも、もう知っている。

鼻先で止まるのは、反抗ではない

猫が新しいフードを拒むのは、においと食感の情報が、それまで食べてきたものと噛み合っていないという反応です。人間の好き嫌いとは少し違う。猫は食べ物の判断を、かなりの部分、鼻で行う。粒を噛む前の数秒で、ほぼ決まっている。

だから、食べないことを根性やわがままとして扱うと、見当がずれる。しつけで直る種類のものではないし、直そうと圧をかければかけるほど、こちらが欲しい行動から遠ざかる。うちでは金属の器のにおいが苦手だったらしく、陶器に変えたら反応が変わった。フードそのものより前の段階でつまずいていた、ということもある。

押し続けると、そのフードそのものが嫌いになる

私が最初に失敗したのは、少量を混ぜて、食べるまで出し続けたことだった。二日目、猫は茶碗に近づかなくなった。三日目、混ぜた粒を器用に残すようになった。そして一週間後、そのフードの袋を開けただけで部屋から出ていった。

これは私の実感でしかないが、食べない状態が続いたフードには、その後も反応が戻りにくい。においを覚えてしまうのだと思う。だから、切り替えで迷ったときの判断はひとつでいい。食べないなら戻す。嫌な記憶を上書きするより、まだ何も始まっていない状態に戻したほうが、次に使える手札が多くなる。

戻す日にやること

戻すと決めた日は、切り替え用のフードを全部しまう。混ぜたものがあれば捨てる。茶碗を洗って、匂いを消す。これだけです。新しいフードを「もったいないから」と横に置いておくと、猫はそれを避けて、食べ慣れたほうにも慎重になることがある。

戻したあとは、いつもの量をいつもの時間に出す。量を増して機嫌を取ろうとしないほうがいい。増やすと食べきれずに残り、それがまた「食べ残し」の記録になって、判断を濁らせる。

何日待つか

目安は、毎食きれいに食べる日が三日続くこと。一回残しただけなら、もう一日見る。うんちの状態と、水を飲む量も一緒に見ておく。ここを飛ばして再開すると、たいてい同じところで止まる。

待っている間に私がやるのは、記録だけ。時刻、出した量、残した量、その日のフードのにおい。あとで読み返すと、「食べなかった」ではなく「何グラム残した」が見えてくる。この違いは大きい。印象で判断していると、実際より悪いほうに寄る。

再開は、前回の半分以下から

やり直すときは、前回止まった割合より必ず小さくする。前回が一対九で止まったなら、今回はその半分、指先でつまむ程度から。全体の一割を超えないところで始める。

そして、出すのは一日でいちばんお腹が空いている食事。私の家なら朝いちばん。夜に試すと、昼間に食べた分が残っていて、においを嗅ぐ前に興味が切れる。朝は椀を置いた瞬間の反応が違う。前の晩から出しておいたフードを片づけて、少し間を空けてから新しいのを出すと、切り替えの判別もしやすい。

比率は、三日食べられたら少しだけ上げる。上げて止まったら、また一つ前の比率に戻す。行って戻ってを繰り返すうちに猫のほうが慣れることもあるし、最後まで受け付けないこともある。そこは、こちらが決められる話ではない。

トッピングは、食べたことのあるものだけ

食いつきが悪いときに足すものは、その猫がすでに食べていて、猫が食べても問題ないと分かっているものに限る。初めての副食をトッピング代わりに使うと、何が効いたのかも、何が嫌だったのかも分からなくなる。

量はごく少なく。そして、食べるようになってきたら、トッピングのほうを先に減らす。トッピングが主役になると、今度はそれを外すときに同じことが起きる。私はこれで一度、振り出しに戻った。

ウェットを少しだけ、という手もある。においが立ちやすいので反応は早い。ただし、ウェットでしか食べなくなると、ドライに戻すときにまた別の苦労がある。最終的にどちらを食べてほしいのかを、先に決めておいたほうがいい。

戻すべきなのは、どの拒み方か

ここは分けて考える。新しいフードだけを残して、今までのフードは食べるなら、切り替えの問題。戻せば済む。

そうではなく、出したもの全部に口をつけない、水も飲まない、元気がない、トイレの回数が減った。このどれかがあるなら、切り替えの話ではない。その日のうちに動物病院へ連絡する。私も一度、切り替えの途中だと思って半日様子を見て、あとで冷や汗をかいたことがある。判断に迷うなら、迷っている時点で電話していい。

記録の書き方

私が使っているのは、冷蔵庫に貼った一枚の紙。日付、朝と夜の二行、出した量と残した量、それから「においを嗅いだ回数」と「口に入れたかどうか」。これだけ。アプリでも手帳でもいいが、台所で立ったまま書ける場所に置くのが大事だった。離れた場所だと、面倒になって書かなくなる。

戻す、やり直す、また戻す。この往復を三回やったフードもある。それでも、今は食べている。当時あのまま押していたら、たぶんこの猫はそのフードを一生食べなかった。戻すのは、負けではない。

縁側の猫係

著者について

縁側の猫係

幼い頃から猫と共に暮らしてきた人たちの著者名義です。畳や縁側のある暮らしのなかで、日々の食事、毛づくろい、トイレ、季節の備えを重ねてきた経験をまとめています。

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