「総合栄養食」は宣伝のための言葉ではなく、日本のペットフードの表示ルールで決められた「用途」欄の区分です。袋の裏に必ず入るこの一語が、そのフードだけで毎日の栄養をまかなえる設計なのか、何かと組み合わせて使う前提なのかを決めています。だから買う前に読むべきは、正面の大きな文字より、用途欄とそのすぐ隣に並ぶ年齢の言葉です。この二つは一組で読まないと意味が変わります。
私は夜、台所の蛍光灯の下で、買ってきたばかりの袋を裏返す。原材料名の小さな文字の塊のすぐ上か下に、「用途」という二文字がある。その横に「総合栄養食」とあれば指で一度なぞって、それから目を少し上へずらす。「成猫用」「1歳以上」「全年齢」。そこまで読んで、ようやくこの袋が何なのかを把握したことになる。片方だけ見て買った袋を、私はこれまで何度か開けてきた。
正面には「まぐろ味」「国産チキン使用」と大きく書いてある。それは原材料とおいしさの話で、用途の話ではない。用途欄は地味で、たいてい目立たない場所にある。けれど、そこにしか書かれていないことがある。
用途欄は、私が何を背負うかを決める
用途欄は、総合栄養食・一般食(副食)・間食といった区分に製品を振り分けます。総合栄養食は、その製品だけで主食として与えられるように設計されたという宣言です。一般食と副食は何かと組み合わせる前提。間食はおやつで、栄養の数字が良く見えても食事の代わりにはなりません。優劣ではなく役割の違いで、私はこれを「これだけで足りるか、何かを足すか」の分岐点として読んでいます。
もう一つ、混同しやすいのは、総合栄養食が「栄養素の基準を満たす設計」の表示だという点です。原材料のグレードや、うちの猫が喜ぶかどうかは、この一語では分かりません。逆に原材料が立派に見える袋でも、用途が一般食なら、それは私が何かを足す前提の商品です。正面の言葉と裏の一語は、測っているものが違う。
やらかした話を書きます。以前、ウェットフードを器に空けて、これが今日のごはん、と出していた時期がある。ある日なんとなく裏を見たら、用途は「一般食」でした。つまり足りない分は私が用意する側で、その日はそれが何も決まっていなかった。ドライの総合栄養食と組み合わせている日はまだ成立していたけれど、「これだけで大丈夫」は私の思い込みでした。ラベルは何も間違っていない。私が読んでいなかっただけです。
それからうちでは棚を分けました。総合栄養食は主食の棚、一般食と副食はおかずの棚、間食はごほうびの引き出し。物理的に離しておくと、手が迷わない。ラベルを毎回じっくり読まなくても、棚が代わりに思い出させてくれます。
隣の「高齢猫用」は、何を変えるのか
年齢の言葉は用途とは別の軸です。子猫用・成猫用・高齢猫用・全年齢というのは、その製品がどんな栄養バランスを前提に設計されたかを示しているのであって、うちの猫にぴったり合う保証ではありません。ここを混ぜると読み違えます。
分かりやすいのは、「高齢猫用」と大きく書いてあるのに、裏の用途が「一般食」の袋。年齢の文字は大きいのに、私はまだ何かを足す側にいる。逆に「総合栄養食」で「子猫用」なら、設計の前提が子猫だという話で、成猫に絶対に出してはいけないという話とは違う。何のために作られたかが変わる、ということです。年齢の言葉は中身の設計図の説明で、うちの猫の診断ではありません。
「全年齢」も同じ。どの段階でも大きな不足が出にくいように設計した、という意味合いの言葉で、万能という意味でも、うちの猫に最適という意味でもない。実際、同じ「全年齢・総合栄養食」でも粒の大きさもにおいも食いつきもまるで違って、そこは数字の外側で、私が器の前で観察するしかない部分です。
二つを並べて読むと、選択肢の意味が変わる
「総合栄養食・成猫用」と「総合栄養食・全年齢」は、どちらも主食として成立します。けれど前者は成猫という前提を置いた設計で、後者は段階をまたぐ前提の設計。うちの猫が成猫なら前者が自然に見えるけれど、後者がダメという話でもない。逆に「一般食・高齢猫用」は、高齢期向けに寄せた設計のおかずで、主食ではない。年齢の文字だけを頼りに選ぶと、この最後の一段が抜け落ちます。
私が裏返してから決める順番
順番はいつも同じです。まず用途欄を探す。次に隣の年齢の言葉を読む。用途が総合栄養食でなければ、うちの何と組み合わせるかをその場で決める。決められないなら買わない。間食は最初から一日の計算の外に置いて、別枠として数える。これを袋を開ける前にやるだけで、家に帰ってからの迷いが減りました。
表示には限界もあります。その商品が何であるかは教えてくれるけれど、うちの猫が今日どれだけ食べるかは教えてくれない。そこは記録の仕事で、私はノートに日付、量与えたもの、便の様子を短く書いています。切り替えるときは少量から混ぜて数日様子を見る、というのもこの記録があって初めて判断できることです。健康に不安がある場合の量や選び方は、表示を読み解く話ではなく獣医の領域なので、ここでは書きません。
正面の言葉は変わります。流行も写真もキャッチコピーも変わる。裏の用途欄は、法律と表示のルールで決まった形式で、そう簡単には変わらない。だから私は裏から読む。それが宣伝ではなく表示である理由で、読む順番としては正面より先だと思っています。