猫のいる部屋で最初に見直すべきなのは、観葉植物の鉢より、精油を使ったディフューザー、お香、ポプリ、香り付きキャンドル、そして植物オイル配合の洗剤や芳香剤のほうです。これらは植物の成分を濃縮した形で空気中に放出し、その一部が室内の表面と猫の被毛に降り積もります。猫は起きている時間の多くを毛づくろいに使い、舌で毛を舐め取るため、空気中にあった成分が口に入る経路ができてしまいます。鉢植えは届かない場所に移せば経路を切れますが、香りには「届かない場所」がありません。植物を確認するのと同じ手間で、空気と被毛の経路も確認しておく必要があります。

私がこれを気にし始めたのは、寒くなって窓を閉め切るようになった夜だった。リビングの棚の上でスティックディフューザーが香りを放っていて、猫は二メートルほど離れたキャットタワーの上で丸くなっていた。距離があるから大丈夫だと思っていた。翌朝、猫の首の後ろに顔を近づけたとき、私が部屋に置いたのと同じ香りが、毛からした。
そこから、自分が何を見ていなかったのかを順番に確かめることになった。
鉢植えは置き場所で解決できるが、香りは解決できない
観葉植物の対策は、実は単純なところがある。猫の届く高さに置かなければいい。吊るす、別の部屋に出す、柵で囲う。物理的に離せば、口に入る経路そのものが切れる。私の家でも、鉢は猫が入れない部屋と、天井近くのハンギングに集めた。
精油のディフューザーには、同じ手が使えない。同じ部屋の空気を共有している限り、薄まった空気を猫も吸っている。しかも霧は床に落ちるだけではない。カーテン、ソファの肘、室内に干している洗濯物、キャットタワーの天面。猫が体をこすりつける場所に、薄く、広く付着していく。人が「香りがする」と感じる程度の濃度でも、付着は静かに進む。
換気扇を回せば空気中の濃度は下がる。ただし、すでに布や毛に付いた分が消えるわけではない。私はここを長いこと一括りにして考えていた。
葉っぱ一枚と、小瓶一本は同じ濃さではない
ハーブの小袋と精油の小瓶は、同じ植物から来ていても中身の濃さが違う。乾燥した葉を一枚かじるのと、何十枚分もの成分を一滴に詰めたものを舐めるのとでは、口に入る量の桁が変わる。加工の過程で、香りの成分だけが抜き出され、濃縮されているからだ。
ただし、これを「濃ければ必ず危険、薄ければ安全」という話として受け取らないほうがいい。猫の体重、体質、部屋の広さ、換気の状態、触れた量と時間で状況は変わる。私が言えるのは、見積もりを誤りやすいのは濃縮されたほうだ、ということだけだ。実際、私自身が「天然だから」と油断していたのは、濃縮された製品のほうだった。
「天然」「植物由来」は安全の印ではない
表示を見るとき、最初に目が行くのは「天然」「植物由来」「オーガニック」という言葉だと思う。私もそうだった。だが、これらの言葉が示しているのは原料の出自であって、猫にとっての安全性ではない。私が見る場所を変えたのはここからだ。
- 「〜油」という形で書かれているか(精油、エッセンシャルオイル、◯◯オイル)
- 「◯◯エキス」「植物エキス」とだけ書かれていないか
- 「香料」とだけ書かれ、中身の記載がないものはないか
- スプレー、ワックス、洗剤なら、使用後に拭き残しが出るタイプかどうか
「香料」とだけ書かれた製品は、中身が表示から読み取れないことが多い。読み取れないものは、読み取れないまま記録しておく。分かったふりをしないほうが、後で動物病院に電話するときに役に立つ。
毛づくろいというタイムラグ
猫の舌の表面には、向きの揃った細かい突起がある。毛に付いたものを絡め取るのに都合よくできていて、だから猫はあれだけ頻繁に毛づくろいをする。結果として、空気中にあった成分が、被毛という別の場所を経由して、口に入る。
厄介なのは、この経路に時間差があることだ。ディフューザーを回したのが夜なら、毛づくろいが増えるのは明け方かもしれない。私が以前、原因と結果を結びつけられずにいたのは、この時間差のせいだった。何かあっても、「昨日のあれのせいかもしれない」という発想が出てこない。
私の家で変えた置き方
- ディフューザーは、猫がいる部屋では回さない。どうしても使うなら、猫が入れない部屋でドアを閉め、終わったら十分に換気する
- お香は、焚いている間と煙が残っている間、猫をその部屋に入れない。換気が終わるまでドアは閉めたままにする
- ポプリと香油の小袋は、引き出しの中や靴箱の中にも置かない。猫は狭い場所に入りたがるので、開けっ放しにしない
- キャンドルは、火そのものが猫の動きで倒れる。猫の届く台の上には置かない
- 精油、洗剤、芳香剤は、猫が開けられない扉付きの収納にまとめる。手の届く棚に一瓶も残さない
- 床や台を拭いた直後は、乾くまで猫を入れない。洗った布巾やモップも、猫が舐められる場所に置きっぱなしにしない
全部を一度にやるのは無理だった。私の場合は、まずディフューザーをやめ、次に拭き掃除のあとの動線を変えた。香りを完全に諦めたわけではないが、「猫と同じ空気で楽しむ」という前提は手放した。猫は自分で部屋を出ていけない。人なら煙たい部屋を出られるが、閉じ込められた側は選べない。
こぼれたとき、電話の前に何を残すか
こぼした、あるいは触ったかもしれないと思ったときは、片付けより先に記録する。私が実際にやっている順番はこうだ。
まず、容器を捨てない。正面と裏面を写真に撮る。裏面の成分表示、内容量、ロット番号まで入れる。次に、こぼれた場所と広がり、量の目安を撮る。それから、紙に書く。
- 日時と、そのときの部屋の状態(閉め切っていたか、換気していたか)
- 製品名と、成分表示から読み取れたこと。読み取れなかったことも書く
- 猫がその場所にいた時間、毛に付いたかどうか、舐めた可能性があるかどうか
- その後の猫の様子で、いつもと違うと感じた点
このメモを持って動物病院に電話すると、話が早い。私には、成分名を読み上げられずに「アロマです」としか言えなかった経験がある。それでは判断の材料にならない。容器の写真を撮る習慣は、そのときから続いている。
香りを全部やめる必要はない、ただし前提を変える
ここまで読むと、家中の香りを捨てろという話に聞こえるかもしれない。そうではない。私が変えたのは、香りの種類ではなく、香りを楽しむ場所と時間のほうだ。猫が入れない部屋、猫が起きている時間の外側、換気が終わるまでの待ち時間。この三つを先に決めてから、香りを選ぶようにしている。
植物を確認する作業は、鉢の前で完結する。空気は、部屋全体と猫の毛の上まで続いている。同じ一つの習慣として、両方を見るようにしたい。