餌の量を変えるタイミングは、猫の見た目や体型が変わってから探すものではなく、あらかじめ決まっている節目で計算し直すものです。具体的には、子猫の成長がゆるやかになる時期、避妊・去勢手術のあと数週間、成猫期の定期的なチェック、そしてシニア期に入る前後の4つ。この節目ごとに、いま与えているフードの100gあたりエネルギーから1日のグラムを出し直します。少しずつ自然にずれていくのを待つのではなく、決まった日に一度だけ数字を書き換える、という扱い方のほうが、量は合いやすくなります。
私がいつも立っているのは、台所のシンク横の狭いカウンターです。右にフードの袋、左に計量カップ、前に小さなノート。袋の裏を返して給与量の表を探し、ノートの前回の数字と並べる。この作業を毎日やらないのは、毎日見ても数字が動かないからです。動くのは、決まった節目の日だけです。
子猫の時期は、量を決める時期ではない
最初の節目は、成長がゆるやかになる頃に来ます。それまでの子猫は、体重1kgあたりで見ると成猫よりはっきり多くエネルギーを必要とします。しかも胃が小さく、一度にたくさん入りません。だからこの時期は、1日のグラムを決めてそこから配るのではなく、数回に分けて食べたいだけ置いておく、という与え方になります。
私も最初の数ヶ月はそうしていました。朝、昼、夕方、寝る前。小さい皿に分けて出し、残ったら下げて、また出す。グラムを数えるのは、この時期だけやめていました。
やめる合図は、見た目より先に来る
切り替えの合図になるのは、体格の変化より食べ方です。それまで空になっていた皿に少しずつ残すようになる。量を要求して鳴く回数が減る。うちの場合は、この変化が先に来て、それから体の成長が落ち着きました。このタイミングで成猫用の表に切り替え、1日のグラムを計算し直しています。
避妊・去勢のあとは、前の量をそのまま続けない
次の節目ははっきりしています。手術です。避妊・去勢のあとはエネルギー需要が下がるので、術前と同じ量を続けると、必要より多く入ることになります。体つきの変化そのものより、この数週間のほうが数字は動きます。
私が決めているのは、術後2〜4週間のあいだに一度、必ず袋の前で計算し直す、という予定です。「太ってきたかな」と思ってから動くのではなく、思う前に一度動く。同じことのようで、順番が逆だと気づけません。術後の診察のときには、その月の体重と、いまの給与量をそのまま伝えられるようにしています。
成猫期は、数年動かない。動くときは動く
成猫になってからの維持量は、数ヶ月単位で見るとほとんど変わりません。だから一度決めると、決めっぱなしになりやすい。私も半年ほどノートを開かない時期がありました。
動かす要因は、体重そのものより生活のほうです。よく遊ぶ時期と、エアコンの効いた部屋で寝てばかりの時期。夏と冬。歳を取るにつれて減っていく遊びの回数。だから私は、毎日グラムを見るのをやめて、月に一度だけ体重と体型を見ます。肋骨に手を当てて、薄く触れるくらいか、押さないとわからないか。抱っこして人間用の体重計に乗り、自分の体重を引く方法でも、数ヶ月の傾向は十分に見えます。
半年に一度、その数字が前回とずれていれば、グラムを出し直す。ずれていなければ、そのまま。見直しは定期点検のようなもので、何か起きたときだけやるものではありません。
シニア期は、自分の計算だけで決めない
7歳前後から、体の中身は静かに変わります。体重が同じでも、筋肉が減って脂肪が増えていることがある。同じグラムでは足りなくなる猫もいれば、活動量が落ちて余る猫もいます。この時期だけは、ノートと袋の表だけでは足りません。かかりつけの獣医師に体重と体の状態を見てもらい、量とフードの相談をします。私の役割は、そのときに渡す数字を正確にしておくことです。
少量を回数多く、という形に変える、エネルギー密度の高いものに切り替える、といった選択肢はあります。ただ、どれを選ぶかは診察の場で決めることで、袋の表とノートを見て私が決めることではありません。
食べ残しは、量の話と混ぜない
高齢の猫が食べ残す、食が細くなる。これは老化の一部として流していいものではなく、一度は診療機関に連絡する合図です。量の見直しの話と混ぜてしまうと、見落とします。私は、食欲が落ちた日は計算の話をいったん横に置いて、その日のうちに連絡する、と決めています。
フードを切り替えたら、量も同時に切り替わる
子猫用から成猫用、成猫用からシニア用。フードを変えるときは、変わるものが二つあります。中身と、100gあたりのエネルギーです。同じ40gでも、入るエネルギーは違います。だから切り替えは、袋を差し替える作業ではなく、計算をやり直す作業になります。
私の手順は単純です。新しい袋の給与量の表を開き、いまの体重がどの帯に入るかを確認し、その行の数字を使う。前の袋の数字は、いったん忘れます。メーカーが違えば同じ体重でもグラムは違うし、同じメーカーでも種類が違えば違います。
ここで、一度やってしまいがちな間違いを書いておきます。成猫用の表の数字を半分にすれば子猫用、ということはありません。シニアだからと成猫の数字を機械的に減らすのも同じです。変わるのは、グラムの手前にある必要エネルギーそのものです。袋の表は、そのエネルギーをグラムに置き換えた結果にすぎません。
袋の表を、どこまで信じるか
給与量は目安で、どの前提で書かれているかが小さく添えられています。避妊・去勢済みか、室内飼いか、活動量が多いか。同じ体重で帯が複数あるのはそのためです。私はまず、うちの猫に近い前提の行を選びます。そのうえで、月に一度の体重と体型で微調整する。表は出発点で、答えではありません。
記録は、変化を探すためではなく、節目を残すために書く
ノートに書いているのは、日付、体重、フードの名前、100gあたりのカロリー、1日のグラム、そして一言の備考です。手術、引っ越し、暑さ、うんちの様子。毎日つける必要はありません。むしろ節目の日だけ濃く書いたほうが、あとで読み返しやすくなります。
このノートの使い方は、変化を探すことではなく、前回いつ数字を書き換えたかを知ることです。獣医師に相談するときも、「最近太ってきた気がして」と話すより、日付と体重とグラムが並んでいるほうが話が早い。私にとっては、そこが一番実用的な用途です。
餌の量は、猫が教えてくれるのを待つものだと思っていました。今は違います。手術のあと、成長が落ち着いたとき、半年ごと、そして7歳の前後。カレンダーに印をつけておいて、その日に袋の前で一度だけ計算し直す。それ以外の日は量のことを考えない。この切り替えが、うちの毎日の食事をいちばん落ち着かせてくれました。