停電で冷房が止まったとき、猫のために窓を開けてもいいのか

この記事の目次
  1. 窓を触る前に、猫を確保する
  2. ガラスは「いま」ではなく「あと」で割れる
  3. ベランダの物は飛ぶ。そして足場になる
  4. 開ける前提の窓を、開かないようにしておく
  5. 開けられないときは、開けない

停電で冷房が止まったとき、猫のために窓を開けること自体はかまいません。かまわない、というより、開けざるを得ない場面が多い。ただし、開けるかどうかをその場で決めてはいけません。冷房が止まる、部屋が暑くなる、窓を開ける、網戸に隙間ができる、猫が出る——この順番で崩れるので、備えは窓そのものではなく順番に対して打ちます。具体的には、開ける窓を停電前に一つ決めておくこと、その窓にストッパーを付けておくこと、そして開けた先のベランダに物を置かないことです。

八月の午後、室外機の音が消えた。あの、部屋の空気が急に止まる感じでエアコンが落ちたと分かる。冷蔵庫だけが唸っている。私はたまたま窓のそばにいて、網戸に手をかけた。開けるつもりはなかった。うちは猫がいるから、窓は開けないと決めていた。それでも「網戸だけなら」と思った。手のほうが先に動いた。いま振り返ると、危なかったのはその一秒で、暑さそのものではなかった。

あなたの家でも同じことが起きると思う。決めごとは、暑さの前では弱い。夏の停電は「暑い」ではなく「じわじわ暑い」なので、危険だという実感がないまま手が動く。だから窓を開けるなと言うのではなく、開ける窓を先に決めておく。効くのはそこだ。

窓を触る前に、猫を確保する

順番は猫、それから窓。逆にしない。キャリアと、フードと水とトイレシートを、窓を開けない部屋にまとめて置いてある。停電したらまずそこへ猫を入れて扉を閉める。その部屋の窓は閉まっているか、開かないように固定してある。これで、ほかの窓を開けるときに「猫はどこにいるか」を考えなくて済む。

うちは猫の部屋を一室決めている。夏も冬も、その窓は開けない。開けない部屋が一つあるだけで、停電のたびに全部の開口部を確認して回る作業が消える。地味だけど、これがいちばん効いた。

ガラスは「いま」ではなく「あと」で割れる

地震のあと、窓ガラスには力がかかっていることがある。ひびが見えなくても、サッシが歪んでいたり、ガラスが枠から浮いていたりする。その状態で窓を動かすと、後から割れる。だから開ける前に、ガラスの面とサッシの隙間を見る。ひび、欠け、白く濁った部分があれば、その窓は使わずに別の窓を選ぶ。

ひびの入った窓をそのままにしておくのも、同じ理由で危ない。余震で落ちてくる。ガラス飛散防止フィルムを貼っておくのは停電の備えではなく、この「あとで割れる」ための備えだと考えている。

ベランダの物は飛ぶ。そして足場になる

ここが、窓だけを見ていると落とす二層目になる。鉢植え、物干し竿、収納ボックス、洗濯バサミ。台風のときは風で飛ぶ。飛んだ物が網戸を破れば、そこが出口になる。それだけではない。猫にとって鉢は踏み台で、物干し竿は橋で、手すりは座るところだ。窓を開けた瞬間に、外に出る道が完成している。

だから窓を開ける前に、ベランダを空にする。鉢は室内へ、物干し竿は部屋の中に下ろす、収納ボックスは倒れてくる位置から動かす。台風が来る前にやっておけば、停電した夜に暗いベランダで片づけなくて済む。

開ける前提の窓を、開かないようにしておく

開ける窓には、ストッパーかリミッターを付けておく。開く幅を十センチ前後で止める金具、網戸の外れ止め、補助錠。夏の前に付けられるうちに付ける。停電してから工具を探すのは無理だ。暗い、暑い、猫が鳴いている。その状況で内側からネジを回す人はいない。

見ておきたいのは、網戸は猫が押すと外れるということ。戸車がへたっていると下のレールから浮く。猫は前脚をかけて体重をかけるので、思っているより簡単に外れる。窓を開ける前に、網戸の下を指で押して、浮かないかを確かめる。浮くなら、その窓は開けない窓に格上げする。

開けられないときは、開けない

条件が揃わないことはある。網戸が外れる、ガラスが傷んでいる、外に物がある。そのときは無理に開けない。開けない代わりに部屋を暗くし、空気を動かし、体を冷やす準備をする。ただしそれは暑さ対策の話で、ここで書きたいのは「開ける窓を一つ決めて、その一つだけ条件を整える」ことだ。全部の窓を同じように開けられる状態にしようとすると、たいてい続かない。

停電してから考えるのが遅いのは、判断が難しいからではない。暑さの中で判断が歪むからだ。今日、窓の前に立って、開ける窓を一つ決める。外に何が置いてあるか見る。網戸の下を指で押す。たぶん五分で終わる。その五分が、八月の午後二時に効く。

縁側の猫係

著者について

縁側の猫係

幼い頃から猫と共に暮らしてきた人たちの著者名義です。畳や縁側のある暮らしのなかで、日々の食事、毛づくろい、トイレ、季節の備えを重ねてきた経験をまとめています。

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