「加湿器をつけているのに乾燥が進む」と感じたとき、先に疑うのは加湿器の性能ではなく、湿度計の置き場所と、加湿を止める基準、そして換気の順番です。湿度計はそのすぐ周囲の空気しか測らないため、床や畳の上に置けば、猫が実際に休んでいるソファの背もたれやキャットタワーの上段より低く、冷たい空気の数値を表示します。まず湿度計を猫の高さ(おおむね床から50〜80cm)へ移し、同じ場所で朝と夕に読む。目安は40〜60%で、その範囲に入ったら加湿を止め、足りなければ加湿器・部屋干し・換気のどれに仕事をさせるかを決める。やることはこの順番だけです。

1月の朝6時、リビングで私は床に置いた湿度計をのぞき込んでいました。針は36%。加湿器は前の晩からつけっぱなしで、タンクは半分まで減っています。それなのに、キャットタワーの3段目で丸くなっている猫の背中を撫でると、毛がパチッと鳴りました。指先にも静電気が来ます。このとき最初に浮かんだのは「加湿器が弱い」ではなく、「この数字は、猫がいるところの数字ではない」でした。
湿度計をタワーの3段目、猫の顔のあたりに置き直して、15分待ってからもう一度見る。43%。同じ部屋、ほぼ同じ瞬間で7ポイント違います。床の36%だけを見ていたら、私はもっと強い設定にしていたはずです。そのまま床の数字を追っていたら、今度は猫のいるところが60%を超えていたかもしれません。
湿度計は「部屋の湿度」ではなく「その場所の湿度」を測る
湿度計は、そのセンサーの周りにある空気を測るだけです。温かい空気は上に、冷たい空気は下にたまりますから、床の近くは低く出ます。うちでは床とソファの背もたれの高さで、だいたい5〜8ポイント違います。同じ高さでも、窓際と部屋の中央ではまた違ってきます。
だから湿度計は、猫が長くいる場所の高さに置いています。キャットタワーの上段、ソファの背もたれ、ベッドの上、人の膝のあたり。猫は床にいる時間も長いのですが、丸くなって何時間も過ごすのは、たいてい床より高い場所です。ここを測らないと、判断が「加湿器の設定を上げる」方向にばかり傾きます。
同じ部屋に湿度計を2つ並べると、2〜3ポイントずれて表示されることがあります。どちらが正しいかを決める作業はしないで、1台を同じ場所に置きっぱなしにして、朝と夕の変化だけを追うようにしています。
40〜60%は、上げるためではなく止めるための数字
目安としてよく言われる40〜60%は、私の中では「止めどき」の数字です。40%を下回ると、静電気が増え、猫の毛が逆立ち、撫でるたびにパチッと鳴る。逆に60%を超えてくると、窓ガラスが曇り、サッシの下に水滴がたまり、窓枠に結露が残ります。それが見えたら、加湿は上げすぎです。
結露は加湿のしすぎを示すサインで、そのままにすればカビの条件がそろってしまいます。猫がいる部屋では、見えないところで増えるものに神経を使いたくないので、私は窓の水滴を見たら迷わず一段下げます。45%前後で落ち着いていれば、それ以上は追いません。
湿度計の精度は、正直そこまで高くありません。同じ型のものを2つ買っても表示が違うことがある。だから絶対値より、「昨日と同じ場所で、今日どう変わったか」のほうが役に立ちます。40〜60%という幅は、その日の判断を少し楽にするための枠だと思っています。
加湿器・部屋干し・換気は、役割を分ける
この三つは、湿度をめぐって綱引きをします。加湿器が上げ、部屋干しが上げ、換気が下げる。順番を決めないと、加湿器を強くして、暑苦しくなって窓を開けて、また強くする、という繰り返しになります。
換気は、窓を開けっぱなしにしません。1回5分を朝・昼・夕の3回。空気が入れ替わったらすぐ閉める。これなら、長く開けているよりも室温が落ちにくく、加湿した空気もそうは逃げません。換気の直後に湿度計を見ると数字は下がっていますが、それは当たり前なので、判断は15分ほど置いてからにします。
部屋干しは、干す前に同じ場所で湿度計を読み、干して2時間後にもう一度読みます。差が出ていれば、その部屋干しは加湿の仕事をしています。差が見えないなら、その場所には届いていません。乾いた洗濯物をいつまでも下げておくのは、加湿ではなくただの置きっぱなしです。
加湿器の方式も、それぞれ性格が違います。スチーム式は立ち上がりが速く、超音波式は白いミストが見えるので効いている実感が得やすい。気化式はゆっくりで、フィルターの手入れが要ります。どれが優れているかではなく、うちの部屋で何分で何ポイント上がるのかを、一度自分の目で見ておくと、その後の判断が速くなります。
タンクとフィルターは、機種より頻度
タンクの水は毎日替えています。内側を指でなぞって、ぬめりが残っていないかを確認する。フィルターはにおいを嗅いで、酸っぱさや生乾きのにおいがしたら手入れの合図です。ぬめりやにおいは、加湿と一緒に部屋の空気へ撒かれます。これは機種の違いより、頻度の違いのほうが大きく出ます。
カビ取り用の強い薬剤を使う前提の手入れは、猫がいる部屋では選ばないと決めています。そのぶん、水を替える回数と乾かす時間でカバーする。地味ですが、こちらのほうが続きます。
記録は、同じ場所と同じ時間だけでいい
湿度計の位置を決めたら、もう動かしません。朝と夕、同じ場所で読む。それだけで十分で、記録用のアプリも表も要りません。私が見ているのは数字よりも、猫の毛の逆立ち方、撫でたときのパチッとする感じ、水を飲む回数です。
湿度計の数字は、部屋の広さ、窓の数、断熱、暖房の種類で変わります。誰かの家の数値と比べても、あまり意味はありません。昨日の自分の部屋とだけ比べる。それで、加湿を止めるタイミングが見えてきます。