爪切りで足先を握っている数秒は、そのまま肉球の観察時間になる。冬に肉球が白っぽく粉を吹いたように見えるのは、暖房で乾いた部屋と乾いた床の上で、もともと厚い皮膚から水分が抜けていくためで、多くの場合は表面の変化でしかない。ここから先は見た目の話ではなくなる、という線がある。ひびから血が出ている、腫れている、歩き方がおかしい、同じ片方の足先だけをしつこく舐めている。どれかが出たら、家で様子を見る範囲ではなくなっている。

爪切りの体勢のまま見る
うちでは爪切りは暖かい部屋でやる。こたつやホットカーペットのそばで猫が伸びているときに、そのまま膝に乗せてしまう。寒い床の上で足を触ると、それだけで嫌がる。体がゆるんでいるときのほうが、足先を預けてくれる。
前足の爪を切るとき、親指で肉球をそっと押し広げる。この一手間が、そのまま肉球の確認になる。爪を切るために足を裏返しているのだから、肉球を見るための新しい動作は何も増えない。指の腹で触れると、冬はざらっとしている。硬く感じることもある。表面に白い粉のようなものが浮いていることもある。
これは、手の甲が冬に白くなるのと近いものだと思っている。肉球は歩くために皮膚が厚くなっている場所だから、乾けば見た目に出やすい。乾いていること自体は、異常ではない。
表面で止まっているか、そうでないか
毎回見ているのは、ひびが表面で止まっているかどうかだ。
触って引っかかる細かい亀裂なら、猫はたいてい気にしていない。爪切りを続けても足を引っ込めないし、切ったあとも普通に歩いていく。
逆に気になるのは、ひびの間が赤い、触ると熱い、肉球の一部が盛り上がっている、足を地面につけた瞬間に力を抜いている、といった変化だ。そして、同じ片方の足先だけを繰り返し舐めている。猫は痛みを隠すので、舐めるという行動のほうが先に出ることがある。ここまで来たら、家でどうにかしようと考えずに動物病院に連絡する。爪切り中に見つけたものなら、その場で写真を撮っておくと話が早い。スマホは足元に置いておく。
爪だけでなく、指の間も見る。足を裏返した流れで、指の股は自然に目に入る。汚れがたまっていないか、赤くなっていないか。これも同じ動作の中で済む。
トイレから運ばれてくる砂の量と並べて見る
肉球のざらつきは、トイレの砂とセットで見ている。猫がトイレから出たあと、床にどれだけ砂が落ちているか。粒が鋭いものや粉っぽいものは、乾いた肉球には擦れる。砂の量が増えた時期と肉球の荒れが重なることがある。
これは砂を選び直すという話ではなく、運ばれてくる量と肉球の状態を並べて覚えておくと変化に気づきやすい、というだけのこと。うちではトイレマットの手前を、なんとなく毎日見ている。
塗る前に成分を見る
乾燥が気になると、何か塗ったほうがいいのかと考えたくなる。けれど猫は足先を舐める。人のハンドクリームがそのまま安全とは限らない。足の近くに何かを使う前に、成分表示を読む。これは私が先に必ず確認する部分で、家族にも同じように言っている。
ただし、ひびが割れて血が出ている状態は、塗りもので済ませる話ではない。皮膚の表面が壊れているということだから、動物病院で見てもらう範囲になる。乾いて白っぽいだけなら、見た目の変化として続けて見ていけばいい。
記録より、同じ手つきで触ること
大げさな記録はつけていない。爪切りは月に何度か必ずやる。そのたびに同じ順番で同じ場所を触る。それが一番続く。乾きが強い日、ひびが少し深くなった日、逆に落ち着いている日。同じ手つきで触っていると、違いのほうが勝手に分かってくる。
爪切りのたびに記録用紙を用意する必要はない。足先を握っている数秒を「爪だけ切る時間」にしないでおく。それだけで、冬の肉球の変化はずいぶん早く気づけるようになる。