春に舞う猫の毛を減らしたいなら、掃除の道具を替えるより先に、換気と湿度の順番を整えるほうが効く。換気で空気中に浮いている毛を外へ流し、湿度で毛を落ち着かせ、それから上から下へ拭いて、最後に床を取る。道具は今あるままでいい。変えるのは順番とタイミングだけで、それでも床に残って見える毛の量は変わる。

三月の終わり、午前の光が窓から斜めに差し込む時間、私はよく部屋の真ん中に立っている。あなたもその場に立って、光の帯の中を見てほしい。細かい毛が、埃というよりは光の粒みたいに、ゆっくり昇っては沈んでいる。床は昨夜拭いたばかりなのに、もう浮いている。手で払うと散って、しばらくすると、さっきとほとんど同じ高さに戻ってくる。
この光の帯を見るようになってから、掃除の順番を変えた。やっていることは、いつ窓を開けるか、湿度をどう見るか、いつ拭き始めるかの三つだけだ。
窓を開けるのは、拭き始める前
朝、まず窓を開ける。掃除の前だ。空気中に浮いている毛を、先に外へ出してしまう。十分とか十五分とか、時間はその日の風による。カーテンが揺れるくらいで十分で、煙のように舞っていた毛が、光の帯から少しずつ減っていくのが分かる。
拭き始めたら窓は閉める。ここが最初に覚えた判断だ。開けたまま拭くと、外から入ってくる細かいものが、拭いたばかりの面に降りる。春の外気は花粉や黄砂を含んでいることが多く、窓を開けている間は、部屋の中の毛が出ていく以上に、外の粒が入ってくる。うちでは、拭き終わった直後にもう一度大きく換気するのはやめた。乾いた拭き掃除で浮いた毛がまだ空気の中にあり、そこへ外の空気が入ってくると、落ち着く場所を探していた毛が別の面に運ばれる。換気は掃除の前に一回、それで足りると思っている。外の花粉の飛び方は日と地域で違うので、朝の換気がつらい日は時間帯をずらすか、短くする。順番そのものより、換気と拭き掃除を同時にやらないことのほうが大事だ。
湿度は、静電気の強さだと思っている
次に見るのは湿度計だ。棚の近くに置いてある。
乾いていると静電気が強くなり、毛は壁や布に貼りつく。舞っているというより、貼りついている状態になる。これがやっかいで、貼りついた毛は拭いても落ちにくく、歩くたびに少しずつ剥がれて、また空気に戻る。だから乾燥した日は、掃除の前に湿度を上げておく。毛を舞わせないというより、舞った毛を素直に床へ落ちやすくする、という感覚に近い。
目安にしているのは40〜60%という範囲だ。これは快適さの話としてよく言われる数字で、絶対の線ではない。うちの場合は50%前後で、毛がカーテンに貼りつく感じが減る。壁や窓の結露の出方、床の冷たさ、猫がいる場所の空気の重さで、ちょうどいい場所は家ごとに違う。上げすぎれば結露やカビ、ダニの話が出てくるし、猫自身が息苦しく感じることもある。湿度は高ければいいものではない。乾きすぎと湿りすぎの間で、その家の線を探すしかない。
春は暖房を切る日とつける日が混ざる。暖房を切った直後は空気が動いて、棚に積もっていた毛がふわっと舞う。だから切った直後に拭き始めると、落ちてくる毛を追いかけながら掃除することになる。うちでは十分ほど置いて、光の帯の中の動きが落ち着いてから始める。
上から下へ、そして拭く前に一拍おく
順番は上から下へだ。カーテンレール、棚の上、照明のまわり、壁、テレビや家具の上、カーテン、そして最後に床。乾いた布やフローラーで上のほうを払うと、毛は下へ落ちてくる。それを最後の床のひと拭きでまとめて取る。逆に床から始めると、上で払った毛が、きれいにした床の上に降ってくる。
ここで一拍おく。乾いた拭き掃除の直後は、細かい毛がまだ空気の中に残っている。すぐに湿らせた布で拭くと、浮いている毛を拾いながら布が移動し、別の面に薄く広げてしまうことがある。だから数分待つ。急ぐ必要はない。光の帯の中の粒が、さっきより減ったなと見えたら、湿らせた布で拭き始める。この待ち時間を入れてから、拭いたあとに残る縞のような毛の筋が減った。
ブラッシングも同じ考えで動かしている。猫をブラッシングすると、必ず毛が舞う。その舞った毛を掃除で取るために、ブラッシングは掃除の直前にやる。うちの猫はブラシを出すと逃げるので、実際は追いかけながらになるのだけれど、順番だけは守っている。
毛が戻ってくる面
拭いても拭いても毛が戻ってくる場所がある。カーテン、壁掛けの布、オープンシェルフだ。
布は静電気で毛を抱え込む。抱え込んだ毛は、人が歩いたり、窓を開けたり、猫がぶつかったりするたびに少しずつ出ていく。だから拭く対象は「面」だけではない。カーテンは週に一度、まとめて軽く払う。壁掛けの布は外して払う。オープンシェルフは、物の間の隙間まで布を入れる。ここを飛ばすと、床を拭いた直後から毛が戻ってくるように見える。
空気清浄機に任せていい部分と、そうでない部分
浮いている毛は、空気清浄機である程度は捕まる。うちでも動かしている。ただし、棚や床に降りた毛には届かない。だから動かしていても、上から下への拭き掃除は必要になる。逆に、拭き掃除の直後の数分は、浮いている毛がいちばん多い時間帯だ。機械を回すなら、掃除の前より、拭き終わって待っている間のほうが拾う量は多いはずだ、と実感として思っている。これは測った数字ではなく、床の上の毛が減るまでの時間が短くなった、という程度の話だ。
全部を取ろうとしない
春の抜け毛期は、どれだけやってもどこかに毛がある。換気と湿度と順番を整えても、光の帯の中に粒は残る。それを全部消すのが目的ではない。舞う量を減らして、床に落ちる場所を一箇所にまとめる。そのくらいの目標のほうが、毎日続く。
最後に一つ。換気や湿度で空気の状態を整えても、猫がくしゃみを続ける、皮膚を掻き続ける、呼吸が普段と違うといった変化は、空気の話では片づかない。そこは獣医に相談する領域だ。掃除の順番でできるのは、あくまで部屋の中の毛を減らすことまでだ。