春の抜け毛を減らす決め手は、掃除機でも粘着クリーナーでもなく、ブラッシングの順番と回数です。床に落ちてから拾うのではなく、落ちる前に体から毛を離しておく。しかも被毛タイプで梳き方は変わり、短毛なら細かいコームやラバーブラシで死毛を浮かせて取り、長毛なら毛束を分けて根元から梳きます。1回を長くやるより、短時間を1日2回に分けたほうが猫は落ち着いていて、結局いちばん多く取れます。
4月の午前、窓から差し込んだ光の中を、白っぽい短い毛がゆっくり沈んでいくのが見えます。前の晩に掃除機をかけたはずの床なのに、朝にはもう薄く積もっている。うちの猫はその光の帯の真ん中でのびをして、あろうことか自分で毛を散らしています。私はというと、長いこと順番を逆にしていました。起きたらまず床の掃除、そのあとでブラッシング。この順番だと、梳いている最中に落ちた毛を猫が歩いて部屋中に運んでいって、午後にはまた床が毛だらけになります。ある朝、先に梳いた日だけ床の毛が明らかに少ないと気づいて、そこから「梳いてから掃除」に固定しました。戻してみると、戻した日の夜にはもう違いが分かります。
掃除の前に梳くという順番
抜けかけの毛は、毛包から半分離れた状態で体に残っています。猫が歩くたび、跳ねるたび、そして空気が動くたびに、少しずつ床へ移っていく。先に取ってしまえば、その分だけ床に届く毛が減ります。掃除の効率の話ではなく、そもそも落とさない話です。
だから朝は、猫がごはんを食べて落ち着いたころにブラッシング、そのあとに床の掃除。入れ替えると、せっかく梳いても床に落ちた分を猫が踏んで運びます。フローリングでもカーペットでも同じことです。
被毛タイプで分ける
短毛の猫
短毛の猫は、見た目より下毛が残っています。表面のツヤはきれいなのに、毛流れに逆らって指で撫でるとザラッとする。これが死毛のサインです。細かいコームやラバーブラシで、まず毛を浮かせる。浮いたところをすくい取る。この二段階を意識すると、同じ回数でも取れる量が変わります。
コツは、1回でごっそり取ろうとしないこと。短毛は皮膚が近いので、強く何度も擦ると赤くなります。軽く10回を2セット、を各部に。
長毛の猫
長毛は「取る」より「絡ませない」が目的です。放っておくと下毛と上毛が絡んで、皮膚の近くでフェルトのような塊になります。ここまで来ると、家のブラシではもう戻せません。だから毎日少しずつ、毛を手で分けて層を作り、層ごとに根元から毛先へ梳きます。
全身を1回で終わらせようとすると、後半で猫が飽きます。今日は左半身、明日は右半身、くらいの気持ちでいい。実際、そのほうが塊はできません。
半長毛・ミックスの猫
和猫やミックスは、首まわりと尻尾だけ長くて他は短い、ということがよくあります。全身を同じ道具で同じようにやる必要はなくて、長いところは長毛のやり方、短いところは短毛のやり方。うちはこれでだいぶ楽になりました。
順番は毎回同じにする
頭のてっぺんから始めて、首、胸、前脚の付け根、脇、背中、腰、しっぽの付け根、後ろ脚。この流れを毎回変えません。猫は順番を覚えるので、先の見通しが立つと途中で逃げにくくなります。
抜け毛が集まりやすいのは、首まわり、胸、耳の後ろ、しっぽの付け根です。ここを後半に回すと、猫が飽きたころにいちばん量の多い場所が残ってしまいます。私はこの4か所を必ず前半に置いています。自分では届きにくい場所でもあるので、梳きがいがあります。
梳く方向は毛流れに沿って。逆毛は毛を浮かせたいときだけ使います。逆方向に何度も梳くと、絡みの原因になります。
1回を長くしない
春のピークは、20分を1回より、5〜10分を1日2回です。長くやると後半は逃げながらの作業になって、胸やお腹といった大事な場所が抜けます。前半と後半で分けると、猫は「もう終わり」と思えるので、次の回も捕まえやすくなります。回数を増やすほうが、トータルではるかに多く取れます。
時間帯は、食後か、猫が自分から寄ってくる落ち着いた時間。遊びの前後は興奮していて向きません。これは毎日同じにすると効きます。
ブラシが苦手な猫
いきなり道具を出すと、まず逃げます。うちは手で撫でるところから始めました。すでに触らせてくれる場所(たいてい顎の下か背中)を、いつもどおり撫でる。それだけで指に数本つきます。立派な抜け毛処理です。慣れたら柔らかい布、その次にやわらかい道具、という順番で。道具を変えるときは、1回につき1つだけ。
終わったあとに見ること
皮膚を見ます。赤くなっていないか、毛が逆立っていないか、猫が同じ場所を繰り返し舐めていないか。赤みがあれば、その日はそこで終了です。ブラッシングは皮膚の上を何度も擦る行為なので、取りすぎより擦りすぎのほうが問題になります。前日と同じ強さでやっていても、換毛期の終わりごろは皮膚が敏感になっていることがあります。
毛量だけを見ていると、このサインを見落とします。量より皮膚、と覚えておくといいです。
触ってはいけないもの
皮膚に張り付いた毛玉は、家庭用のはさみで切らないでください。皮膚をつまんで切ってしまう事故が起きます。自分で判断せず、動物病院かプロのトリマーに見てもらう領域です。
梳いても梳いても取れない、皮膚のすぐ上で毛が板のようになっている、という状態は、家のケアの限界のサインです。ここから先は無理をしない。
最後に一つだけ
春の抜け毛対策でいちばん効くのは、いい道具を探すことではなく、梳く順番と回数を固定して、それを掃除の前に置くことです。うちはこれで、朝の床の毛が目に見えて減りました。道具は今あるもので始めて、猫の反応を見ながら、必要だと感じたところだけ足していけば十分です。