春の猫毛がソファや布団に残りやすいのは、水を含んだ毛が布の繊維に張りついて絡み、乾くとそのまま固まるからです。落とす順番は、洗濯の前、まだ乾いているうちに、布の目に沿ってゆっくり。洗ってから落とそうとすると、毛は織りの内側に入り込み、表面をこするだけでは出てこなくなります。

四月の午後、窓を開けた部屋でソファに座ると、斜めに入る日差しの帯の中だけ、クッションの表面に灰色の産毛が浮いて見えます。私はしばらく前まで、その毛を濡らした手のひらでぬぐっていました。取れているつもりでした。でも、乾いたあとの布を指でこすると、織りの奥に白っぽい層が残っている。水は細い毛を寝かせて布に貼りつけ、乾くとその姿勢のまま固める。濡らしてから落とすというのは、毛を布に接着してから剥がす作業でした。
今は逆にしています。乾いたスポンジか、薄手のゴム手袋をはめた手のひらで、布の目の流れに逆らわず、端から端へ一方向にゆっくり。音はザッ、ザッという低い音で、力を入れると毛が舞います。舞った毛は別の場所に着く。だから速くこするより、ゆっくり同じ方向へ往復するほうが、結局は早く終わります。
一度ぬぐっただけでは足りません。手のひらに付いた毛をまとめて捨て、また同じ場所へ戻る。三回ほど繰り返すと、日差しの帯の中に浮いていた毛が減って、布の色が元に戻っていく。この「戻る」感覚が、その日の終わりの目安になります。
まず乾いた布の上で落とす
ソファカバーは、外す前に一度落とします。外してから広げると、はがす拍子に毛が部屋へ散る。外す前の乾いた一回は、その散る量を減らすためのものです。外したら、今度は平らなところに広げて二度目。縫い目、座面の角、肘掛けの内側は毛が集まりやすいので、そこだけ念入りに。
布団やシーツも同じ順番です。シーツをはがす前に、掛け布団の表面を乾いた状態で一往復。はがしてから洗濯機へ、ではなく、はがす前に一度、畳む前にもう一度。毛布は起毛しているぶん毛が絡みやすく、落としたつもりでも半分ほどは残っていることが多い。二回に分けてやるほうが、結局は楽でした。
道具は、乾いたスポンジでもゴムの面でも布団用のブラシでも、布を傷めずに毛を引っかけて持ち上げられるものなら何でも構いません。大事なのは道具より方向と速度のほうです。
カーテンは上から下へ
カーテンはソファとは毛の付き方が違います。こすりつけられるのではなく、空気中を漂った毛が積もる。だから上のほうが濃く、下へ行くほど薄い。落とすときは吊るしたまま、上から下へ一方向です。下から上へやると、上の毛を下へ運んで裾に集めてしまいます。
外して洗う前に、スチームをかける前に、この一往復を入れておくと、洗濯槽へ流れる毛の量が変わります。レールから外した瞬間、カーテンはパタンと畳まれますが、その一拍のあいだに毛が落ちます。下に新聞紙でも敷いておくと、あとが楽です。
洗濯は手順の一部で、担当が決まっている
ここまでで落としきれなかった分が、洗濯の担当です。だから洗濯は最後の仕上げではなく、順番の三番目くらいの工程になります。全部を洗濯に任せると、毛は布の中でほぐれて、今度は全体に均一に広がります。
猫の毛が多く付いたものは、普通の洗濯物と分けて回します。分けるだけで、他の衣類に移る量が目に見えて変わります。一緒に回すと、洗い上がったシャツの袖に毛が付いている、ということが起きます。
洗濯のあとに見る場所も決まっています。洗濯槽の糸くずフィルター、乾燥機のリントフィルター。春は普段より早く詰まります。細く短い毛はリントスクリーンの目をすり抜けるので、フィルターがきれいでも槽の中に残っていることがある。洗濯のあとに一度、次の洗濯の前に一度、見ておくと安心です。
部屋干しの日は、干しているあいだも毛が舞っています。締め切った小さい部屋だと、乾いた毛が空気の中を回り続けて、干し終わった衣類にまた着く。干すときと取り込んだあとに、短時間でも窓を開けて空気を入れ替える。取り込んだあとの床を一度拭くと、翌日に舞う分が減ります。
部屋着という一枚
室内で着るものを一枚決めておくのも効きます。外出着でソファに座ると、服に付いた外のほこりや毛がそのまま布に移る。逆に、家の中で着た服には室内の毛が付いて、それが洗ったばかりの布団やソファに戻る。部屋着を決めて、それだけを頻繁に洗う。全部を完璧にするより、移す側を一枚に絞るほうが現実的です。
それでも残る分と、相談したほうがいい変化
正直に書いておくと、全部は取れません。ループ状に織られた布や、毛足の長い起毛のソファは、毛が奥まで入り込んで、表面をどれだけ丁寧にやっても層が残ります。古い毛ほど出てきません。だから目安は「座る前に一度、日差しの帯で確認する」くらいで十分で、白い布の上に一本もない状態を目指すと続きません。
ひとつだけ、洗濯の話ではない合図があります。布に残る毛が脂っぽく触れる、あるいは普段と違うにおいが布に移る。そういうときは、落とし方を変える場面ではなく、猫の皮膚や被毛の状態を獣医に相談する場面です。洗剤や道具を替えても、原因は布の側にはないからです。