爪とぎは爪切りの代わりになる? その思い込みを外す考え方

この記事の目次
  1. 落ちているのは爪ではなく、爪の外側の層
  2. 室内の猫に切る頻度が下がらない理由
  3. 間隔は「何日ごと」ではなく爪先の感触で決める
  4. 爪切りをしても爪とぎは減らない
  5. 足先の持ち方で変わること

爪とぎは爪切りの代わりにはならない。爪とぎが爪に対して行っているのは、古い外側の層を引っかけて剥がし、その下にある尖った爪を表に出す作業であって、爪の長さそのものを短くする作業ではない。爪は根元から生涯を通じて伸び続けるから、爪とぎを毎日のように使っている猫でも爪先は伸び、定期的に切る必要が残る。爪とぎの台の前で伸びをしている姿と、実際の爪先の長さは、別々に確かめなければならない。

爪とぎは爪切りの代わりになる? その思い込みを外す考え方

その区別がはっきりしたのは、爪とぎの台の横のフローリングに落ちていた、三日月の形をした薄い殻を拾ったときだった。半透明で、爪の形をそのまま写し取ったようで、先だけが白く濁っている。指でつまむと、ぱき、と乾いた音を立てて折れた。猫が爪とぎをした直後で、台のまわりには同じものがいくつか散っていた。これが爪なのだと思って、膝の上で丸くなっている猫の前足をそっと取り、肉球を親指で押してみた。出てきた爪先は、思っていたより長く、先がゆるやかにカーブしていた。殻が落ちたのだから短くなっているはず、という予想は、その指先の感触であっさり外れた。

あとで、落ちていたのは爪そのものではなく、爪の外側の層だけだと気づいた。猫の爪は幾重もの層でできていて、古い層がはがれ、内側の新しい層が現れる。爪とぎは、その一番外側を引っかけて落とす動作だ。落ちたあとに残るのは、短くなった爪ではなく、表面のざらつきが取れて鋭くなった爪である。削っているというより、鞘を脱いでいると言ったほうが近い。

落ちているのは爪ではなく、爪の外側の層

爪とぎの動作を近くで見ていると、爪先を板に引っかけて、手前に引いている。このときに起きているのは剥離であって、摩耗ではない。だから爪とぎの回数が増えても、爪の長さは削られて短くならない。伸びるのは根元の話で、落ちるのは先端の外側の話だから、この二つは別々に進む。爪とぎが上手な猫ほど爪先はよく尖っているが、それは「よく研がれている」ということで、「短い」ということではない。

伸びる速さは爪とぎでは変わらない

爪が伸びるのは、根元の爪床から新しい角質が押し出されてくるからだ。この速度は爪とぎの量では変わらない。1日に何回爪とぎをしても、根元の生産は淡々と続く。だから「たくさん爪とぎをしているから大丈夫」という判断は、根元と先端を混ぜてしまっている。

室内の猫に切る頻度が下がらない理由

外に出る猫は、アスファルト、土、木の根、砂利など、硬くてざらついた面に爪先を当てて歩く。このときに先端が少しずつすり減る。爪とぎによる剥離とは別に、摩耗という短くなる要素が加わるわけだ。室内の猫が歩くのはフローリング、カーペット、布団、ソファで、どれも爪先を削るようにはできていない。爪とぎの台はあっても、摩耗の担当がいない。

だから室内の猫のほうが、切る頻度は高くなりやすい。ここは順序を間違えやすいところで、「爪とぎをしているから切らなくていい」ではなく、「爪とぎをしていても、外を歩かないぶん切る頻度は下がらない」が実際に近い。

間隔は「何日ごと」ではなく爪先の感触で決める

「2週間に1回」のように日数で決める話をよく見かけるが、うちでは日数より感触を先に見ている。前足の爪先を手のひらにそっと当てて、引っかかる感じがあるかどうか。歩くときに床をコツコツと鳴らしていないか。フローリングを走って、止まるときに滑っていないか。抱き上げたときに、爪が服や腕に刺さらないか。先が内側に丸まって、肉球に近づいていないか。

このどれかが気になったら、日数に関係なく切る。逆に、爪とぎをよくしている時期でも、爪先の感触は意外と変わっていないことがある。爪とぎの頻度そのものは、切るかどうかの判断材料にならない。

爪切りをしても爪とぎは減らない

爪とぎには、爪の手入れ以外の役割がある。前足を前に伸ばして背中を丸めるストレッチと、肉球のあいだから出るにおいを場所に残すマーキングだ。だから爪を切った直後でも、猫は同じように爪とぎの前に立つ。切ったから爪とぎが減る、ということは起きない。逆に、爪とぎの場所を増やしたから切る間隔が伸びる、ということも起きない。この二つは別々の用事をしている。爪切りのあとに爪とぎをして、爪先がまた尖る、という順番も普通に起きる。

足先の持ち方で変わること

切るときの手順は、猫ごとに少しずつ違う。うちで落ち着いたのは、床に座って、膝の上に猫を横向きにのせ、お尻を自分の体に預ける形だ。片手で胸のあたりを軽く支え、もう片方の手で足首を後ろから包む。爪は親指で肉球をそっと押すと出てくる。1本切ったら一度手を離し、猫が姿勢を変えたがったら変えさせる。全部を一度に終わらせようとすると、たいてい途中で嫌になる。

後ろ足は前足より嫌がる。前足2本の日、後ろ足の日、と分けてしまうことも多い。切るのは先端の透明な部分だけで、内側のピンクの部分には触れない。白っぽい爪は中が透けて見えるが、黒い爪は見えないので、少しずつしか進めない。

嫌がる時期は、切らない日に爪先を触るだけの日を作る。触る、離す、を何度か繰り返す。これを続けると、爪切り自体が短く済むようになる。うちではこの順番のほうが、一度に全部切るより結果的に楽だった。

さやの落ち方は猫によって違う。若い猫はよく剥がれるし、歳を重ねて爪とぎの回数そのものが減る猫もいる。爪がもろくて割れやすい子もいる。だから「爪とぎをしているかどうか」だけでは、爪の状態は判断できない。

爪とぎの台の前に立って前足を伸ばしている姿は、爪が整っている証拠にはならない。あの行動が整えているのは、爪の外側の層と、姿勢と、においだ。長さは別のところで伸び続けている。だから、ときどき爪先を手のひらで確かめる。それだけで、切るタイミングは自分で決められるようになる。

縁側の猫係

著者について

縁側の猫係

幼い頃から猫と共に暮らしてきた人たちの著者名義です。畳や縁側のある暮らしのなかで、日々の食事、毛づくろい、トイレ、季節の備えを重ねてきた経験をまとめています。

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